姉さん、事件です(声・高嶋政伸)

 

こんにちは。ネット上に散らばる様々な細かい翻訳の仕事を大量にこなしています英日翻訳者の加藤(@flux54321)です。

 

エストニアに行ったら未経験で翻訳の仕事につけたという謎の経歴でWasabiさんと言うベルリン在住のブロガー様にインタビューされたこともあります(以下記事参照)

https://wsbi.net/kato_shinya

 

当サイトのメインコンテンツのエストニア滞在記です↓

エストニア滞在記

 

DeepLというドイツのAI(深層学習)翻訳サービスの精度がすごいらしい

姉さん、事件です(声・高嶋政伸)。

マジで事件なんです。

 

 

数年前にGoogle翻訳の精度が突然上がり「あーあ、これは翻訳者の仕事無くなるわ」と一部で言われたりもしましたが、実際は全然無くなりませんでした。僕も翻訳の仕事で参考にする時にGoogle翻訳を使ったりもしましたが、正直言ってあまり参考にはなりませんでした。精度が上がったとはいえニュアンスとか誤訳も多くて、99%自分で翻訳した方がマシなレベルでした。2020年になった今でもそうです。

ところが、少し前に backspace.fm という僕の好きな超絶人気ITガジェット系トークポッドキャストで deepl.com という翻訳サイトが話題に出てきました。

出演者の方が2人共「これはちょっとすごい」とべた褒めしていたり、学生時代外国語系の学部だった出演者の方も「こういうのが出てくると若い時に英語をコツコツ努力して勉強した意義が若干崩れるよ」というニュアンスの事を言われておりました。

 

 

DeepLはたしかにすごかった

試しに僕もDeepLを使ってみましたがこれが驚きの精度。翻訳の精度が高いというのは誤訳が少ないということもありますがむしろ、DeepLの吐き出す訳文は機械的な文章ではなく、人間的なニュアンスまで込みで翻訳してくるところでしょうか(少なくともGoogle翻訳と比べて)。

 

たとえば「I love you」をGoogle翻訳に入れると「私はあなたを愛しています」という極めて中学校の英語の教科書的な日本語が出てきます。

ですが同じ「I love you」をDeepLに入れると「愛してる」とだけ出てきます。ニュアンスの違いというのはこういうことですね。

 

「I love you」を日本語ネイティブが日本語で言う時に「私はあなたを愛しています。」とか言わないじゃないですか。

ふつう主語の「私は」は省略するし、そもそも「I love you」とか言うような関係性なら、多くは語尾が「愛しています」という口調の丁寧語には殆どの場合ならないですよね?

 

そういう「主語の省略」とか「丁寧語ではなくタメ口」といった直訳ではなくニュアンスまで含めて翻訳してくるのがDeepLがスゴイってことなんですよ!

 

おわかりいただけました?

 

ちなみにMac/PC用のアプリをダウンロードすると「コマンド  +   C x 2回」と押すだけでブラウザなどで選択した部分を自動的に翻訳文として出力してくれます。しかも無料。

原文の言語を自動検知にしていれば英語だけでなく、スペイン語・中国語・ポルトガル語などメジャーな言語ならどれでも比較的高確率でそれなりに日本語にしてくれます。

知らない外国語の趣味のサイトとか読むのも捗るかもしれません。新たな世界が広がりますね。

なんてったって「コマンド  +   C x 2回」するだけなんで。

 

 

DeepLが高精度なのは Linguee という対訳サイトの文章が大量に参照されているから

翻訳者の方や英語の勉強をされている方なら一度は見たことがあると思う Linguee というサイトがあります。DeepL と Linguee を運営しているのは同じ会社のようです。

https://www.linguee.com/

 

この Linguee というサイトには様々な2つの言語どうしの「対訳文」が大量に掲載されています。DeepLでは、この Linguee の大量の対訳文を学習させることで Google を凌駕する翻訳サービスを開発することが出来たようです。

Google翻訳がITの専門家が作った翻訳サービスであるのに対して、DeepLは翻訳の専門家が作った翻訳サイトと言えそうです。

 

でもさらに Linguee について調べるとこのドイツの会社 Linguee の創業者は「元Google」でした。

 

「結局どっちもGoogleじゃないか!😨驚愕」

 

フォーマットが決まっている翻訳の仕事では校正(proofreading)が翻訳者の仕事になるかも

ではこの先の未来に翻訳者の仕事が無くなるのかどうかについてですが、それについてはよくわかりません。

でも文体のフォーマットがガッチリと決まっているような専門的な分野の翻訳とかだと「AIに翻訳させる」→「人間が確認して修正する」というワークフローが一般化するかもしれません。

その機械が翻訳した文章を確認して間違っていたり不自然なところを校正(proofreading)するだけというのが人間の仕事になるかもしれません。

例えばWikipediaで考えていただくと分かりやすいかもしれません。Wikipediaは百科事典なので書き方のフォーマットがカッチリと決まっていますよね。

試しにWikipediaでメジャー言語だけど読めない言語の文章をDeepLで翻訳してみてください。

文章にもよりますが、人間が翻訳したかのようなかなり自然な日本語の文章が確認できるはずです。

こういうフォーマットが決まっている翻訳は機械の入り込む余地が高いと言えそうです。

 

“感情や文脈込みで翻訳する仕事が増えるかどうか” が人間翻訳者存続の鍵になると思う

DeepLは確かにすごいし、これでさらに本家Google翻訳と切磋琢磨して進化するのではと考えると末恐ろしくなります。

このまま行くとフォーマットが決まった文章の翻訳のある程度の部分はAIが行うことになりそうです。

ということは逆に言うとカジュアルなブログの文章、小説やエンタメなどのストーリーや話者の感情が入っている文章。様々な世相や文脈を把握した上でニュアンスを伝えないといけないコピーライティングなどの翻訳の分野ではまだまだ人間は安泰だと言えそうです。

ようするに感情や文脈や世相を把握して翻訳しないといけない題材ではまだまだ人間は活躍の余地があると言えると思います。

 

もらえるお金は需要と供給でほとんど決まる

 

ごんぎつねの新美南吉の話でランプを売っていたら街灯が整備されたので食べていけなくなって仕事を変えたという話だったり

 

子供向けの教育的な漫画のみが漫画であると信じて漫画を描いていたら漫画が多様化して時代の変化について行けなくなって絶筆したり(テラさん・・・)

 

当たり前なんですけどテクノロジーの進化や社会構造の変化で需給が変わって仕事の価値が減ったりするんですよね。

もし自分が近い未来に万が一その当事者になってしまったとしても、そういうもんだと考えてポジティブに変化して行きたいですね。

 

そもそも他の言語から日本語への翻訳の仕事が存在するってことは日本語話者が多くて1億人も居て、日本語がある程度需要のある言語って事なんですよね。たとえばマイナー言語だと翻訳の市場自体が無かったりするみたいです。

例えばオランダ人でゲームが好きな人の話なんですけど、オランダ語に翻訳された外国のゲームやアニメなどのコンテンツが少ないので16歳ぐらいで英語ができるようになってから初めて外国のゲームやアニメを楽しめるようになったりするみたいです。市場として成立しにくいので、オランダ語のゲームやコンテンツがほとんど存在しないからです。つまりオランダ語の翻訳市場って英日とかと比べてめちゃくちゃ小さいって事ですよね。

 

だから日本語の翻訳の仕事があるってことは需要があるって事なんだなあとポジティブに考えることにしましょう。

 

あるだけマシ。のっぴきならないぐらいに世の中が変化したら、自分も変化しよう。ってことで。まあきょうび翻訳者だけじゃないですけどね。変化しまくってるじゃないですか今も毎日👍

 

ではまた。