ぶっ飛ばせコロナ禍!

どうもこんにちは。今回はNetflixで見つけた1979年の日本のカルト映画「太陽を盗んだ男」の感想を書きたいと思います。

結論から言うと凄まじいエネルギーの映画でした。見た方が良い。自分は好きでした。見ましょう。

https://www.netflix.com/title/81318400

※少しだけネタバレあり

 

あらすじ

沢田研二が演じる高校の科学教師(シラケ世代)が原爆を自作して日本政府を脅します。その経緯を描いた映画です。

 

陳腐なシーンが無い

最初僕は古い映画だと高を括っていましたが、いざ見始めると最初から最後までつまらないシーンが一つもありませんでした。

「面白いシーンを見せよう」「何処かで見たような陳腐なシーンは見せないようにしよう」といった作り手側の気迫が最初から最後まで感じられる映画でした。

脅迫したり戦ったりするシーンでは見た事ないような演出が多々ありました。人の倒れ方とか移動の仕方とか、やってる事を文字にすると普通のシーンなんだけど、映像で見るとどれもどれも他で見たこと無い感じの演出なんですよね。他で見た事無い演出なのにちゃんと演出として全て効果的なんですよ。

凄いなーと感心しました。マジで。

 

緊張感が最後まで続く、先が読めない映画

弛緩せずに最後まで緊張感が続くんですよね。自室で被爆しながら原爆を製造するシーンはもちろん、序盤の皇居のシーンとか、ラジオで公開で脅迫したり、とにかく主人公が最初から最後までずっとヤベーやつ過ぎて行動が奇抜過ぎて見てるこっちがずっとハラハラしてしまうんですよね。主人公は何をするにもためらう瞬間が一切ないんですよね。

序盤の盛り上がりシーンが終わった後に学校の一般の生徒のセリフで「でもあの先生も相当キ〇〇イだったぜ」みたいなのがありますけど、主人公は職場でも生徒から相当ぶっ飛んだ人間だと認識されていると言う事が分かるんですよね。この言葉から。

先の展開が読めず最後までハラハラ出来るので視聴体験としてもとてもエキサイティングな物になったと感じました。

 

監督の生い立ちとエネルギーが映画に注ぎ込まれててヤバい

長谷川和彦さんが監督なんですけど、この方の生い立ちを読むと、広島原爆の被爆二世だったので自分は長生きできないと思って生き急いだり、東大生なのに中退して映画界に入ったりそういう生き急ぐ感じが主人公にそのまま投影されているように見えて(というか間違いなくされてて)それがそのまま映像として作られて我々の目の前に映し出されると言う体験を映画を通してする事になるんですよね。監督のエネルギーがそのまま画面通してこっち伝わって来る感じなんですよね。映画の最後まで。

 

撮影時にスタッフ逮捕されまくったりしてるのがヤバい

Wikipediaを読むと、撮影時に無許可で撮影してスタッフが逮捕されまくってるんですよね。

ビルの屋上からお札をばら撒くシーンだったり、皇居前でバスで暴走するシーンだったり、挙げ句の果てにはカーチェイスの撮影のために高速道路の入り口と出口を全部塞いで撮影に挑んだり、実際に映画内にそのシーンが全部あるので「これほとんど全部逮捕されながら違法に撮ったシーンだったのか…」と驚いてしまいます。

しかも凄いのは逮捕される用のスタッフを別に用意して撮影してるって事なんですよね。

警察が来た時に別人を「私たちがスタッフです」と言って逮捕させてまで映画を撮り続けてるその執念に笑ってしまいました。今だと絶対に無理です。

 

安保闘争が下火になった後に若者のエネルギーは何処に向かって行ったのか

映像でストーリーとは無関係に当時盛り上がって居た沖電気の労働闘争の街頭演説のシーンが映ったり、何かと戦後の冷戦下のイデオロギー的な映像がチラチラと映されるんですけど、主人公は右左のイデオロギーに一切関与しないんですよね。

原爆でテロ予告をして政府を脅すと言う主人公には一見イデオロギー的な思想が背景にありそうですけど、実際には愛国心とか憂国心に突き動かされたとか、共産主義的・無政府主義的な思想があるとかは最後まで一度も示される事なく終わるんですよね。

主人公は科学の先生だったので科学の知識を使ってとりあえずデカイことやってやろうという若者特有のエネルギーのみで駆動してる感じが見てて斬新で面白かったです。大きな物語が喪失し始めた時代として象徴的な作品だったのかもしれませんね。(知らんけど)

 

シラケ世代は冷戦下の安保闘争にシラケてただけ

安保闘争をやってた団塊の世代の少し下の世代をシラケ世代って呼ぶらしいんですけど、単に安保世代から見て下の世代がシラケてるように見えただけだと思うんですよね。でも下の世代からしたらただ冷戦構造がオワコンになって行ったのでそこに乗っかってもしゃあないやんという雰囲気になってたと思うんですよね。

映画が公開されたのは運動が決定的に下火になった山岳ベース事件とかあさま山荘事件が起こってから既に7年も経ってからなので、もう完全に運動としては下火だと思うんですよね。

だから繰り返しになるんですけど、イデオロギーの時代は終わり、個人の終わりなき日常をどう生きるかみたいな時代に突入して行く最初の時代だったんでしょうね(知らんけど)

あさま山荘事件と山岳ベース事件の事が分かる漫画「レッド」↓

 

若者の迸るエネルギーの発露がテーマ

だから主人公は年齢的にどう考えてもモラトリアムを過ぎては居ますけど、やっぱり胸に秘めたる若さゆえのエネルギーは凄まじい物があり、そのエネルギーが個人での原爆製造と政府脅迫に結びついてしまうのが、一言で言って面白過ぎますね。

 

ラストシーンの自分の解釈(ネタバレ)

ラストシーンも凄く秀逸で、警察から逃げ切った主人公がタイマーの作動し続けた原爆をカバンの中に入れながら渋谷のど真ん中を歩くんですけど、そこで楽しげなエンディングのBGMが流れて、「ああ〜、爆発するかどうかは何となくボヤかしてこれで映画は終わりなんだな〜」と思いきや突然BGMが停止、映像も静止画状態になり、原爆の爆発音が流れるという見たこともない斬新な編集で、やっぱり最後の最後までこの映画凄いな〜。と感心してしまいました。

この文章を書いてる今も「やっぱりこれ凄まじい映画だな〜」と思いにふけってしまいます。

で、最後のあの爆音のシーンは解釈が分かれていたり、公式的にも色々あるみたいなんですけど、個人的には爆発したと考えた方が腑に落ちますね。

主人公はもう被爆していますし、あんなに警察に追われながら脅迫を頑張った()んだから今更爆発しないとなるとなんか腑に落ちないんですよね。自分的に。

というわけで

太陽を盗んだ男は

めちゃくちゃ面白いからオススメ

 

https://www.netflix.com/title/81318400

 

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