こんにちは

 

今回は日本人の現代美術家である池田亮司(Ryoji Ikeda)さんのコンサートがタリンで行われ、見に行った時のことを書きたいと思います。

 

 

池田亮司さんとは

 

まずはこちらのバルセロナでのライブ映像をご覧ください。

 

 

「か、かっこいい〜:D」

 

Youtubeでたまたまこの映像を見た時、僕は心底感動しました。こんなにデジタルでミニマルでかっこ良い日本人アーティストの方がいるのかと。しかも音も映像も両方作っているのかと。

池田さんは物理や量子力学の理論を使って作品を作られているようです。この言い方が正しいのかわかりませんが、ある意味では作品も落合陽一さんと近いジャンルのような気がします。

映像で流れているのはDataplexというアルバムの Data.Matrix という曲です。映像ではライブ用に曲の終盤をアレンジしているようですが。

 

 

このDataplexというアルバムを買おうとしたら当時日本のアマゾンに無く、結局ドイツのアマゾンから取り寄せたのですが、ドイツのアマゾンは日本のアマゾンと違って包装がとてもコンパクトでした。日本のアマゾンの何を買っても同じサイズのあの箱ではなく、CDケース2枚分ぐらいの薄いダンボール紙のケースに入って届けられました。日本のアマゾンのデッドスペースの大きいパッケージも何か配達上の理由があるのだと思いますが、気になるトコロではあります。

 

それで、当時僕は日本で池田さんの展示やライブが催される日を調べました。しかし中々自分の都合に合う日がありませんでした。やはりアート系のイベントは日本では圧倒的に東京が多いです。現代アートとなると尚更です。なので僕の居た大阪ではさらに見るチャンスがありませんでした。

 

それに池田さんは海外での公演や展示が圧倒的に多いので、そもそも日本に来る機会が少なそうなイメージでした。

 

 

タリン市内でポスターを発見

 

そんな感じで中々お目にかかることが出来なかったのですが、ある日タリンを歩いていると衝撃のポスターを発見しました。

 

 

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え、マジ?(つд⊂)ゴシゴシ

 

一瞬、目の錯覚かと思いましたが現実でした。タリンの現代美術館KUMUで開催されるというポスターが街角にありました。

 

日本で見ることが出来なかった池田さんのライブをまさか8000キロ先のエストニアで見ることになるとは!これ以上の幸運は無いのでライブに行くことにしました。

 

KUMUでは2週間池田さんのインスタレーションの展示が行われていて、ライブは展示の最終日に催されることになっていました。

 

 

KUMU(エストニア現代美術館)

 

Untitledこちらがエストニア現代博物館のKUMUの入り口です。カドリオルグ宮殿の近くにあります。(今KUMUのサイトを見たら日本語表記が追加されていて衝撃を受けました。エストニアの公式サイトで日本語が言語に加えられているのを見たのは始めてです。でも日本とはマイナンバーカードで繋がりがありますから。)

 

Untitled KUMUの近くにあるカドリオルグ宮殿

 

Untitled

KUMUの内装はとてもキレイで、やっぱり現代アートの本場の北欧だけあります。

 

Untitled

常設展示も見られます。ソビエト時代から現代まで様々な展示があります。

前衛的な絵画でも国民性なのか色調が割と暗かったりします。

 

この後アイスランドに行くと同じような構図の前衛画でも色調が一気に明るくなったのを見て、国民性でここまで変わるんだなと思いました。

 

アイスランドは欧州一性格が明るいと言われているほどの国で、しかも世界で最も北にある国なのに暖流や火山のおかげで他の北欧の国よりも暖かいのです。

 

国民性ってかなり地理的要因に左右されるなと思います。エストニアはたぶんずっと昔から地理的に大人しい人が多いのです。

 

 

池田さんの展示を見る

 

そしてついに楽しみにしていたインスタレーションです。

 

動画で撮ってきました。

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やっぱり格好良いですよね〜。

 

いっしょに行ったスイス人の男性もベタ褒めしていました。

 

 

ライブが始まる

 

ライブが始まる前にホワイエに行くと観覧客が集まっていました。見た目なんとなくみんな意識高そうだなと思いました。アジア人は見たところ僕一人でした。たまたま近くに居たキュレーターのエストニア人に話を聞くと、今回のイベントは数年越しのラブコールで実現したそうです。

席につくと満席でした。隣に居たエストニア人の女声がなぜか「猪木」と書かれた法被を着ていました。日本に行った時に買ったそうです。そうですか。

 

池田さんが壇上に表れてラップトップの前に立ちライブが始まりました。

正直想像以上にかなり抽象的な内容でした。連続したデジタルノイズの音と白黒のバーが動く映像が繰り返されます。パッと見た感じ同じ音と映像の繰り返しに見えますが、それらの中には実は「僅かな変化」があり、その僅かな変化を見出すように自分の感覚器の感度を上げることがこういったミニマル系のアートの楽しみ方なのかなと個人的に思っています。

 

ちなみにノイズと白黒の映像に耐えきれなくなったのか、2名ほど客席から逃げるように退出したお客さんが見えました(笑)

 

全体で30分ほどで池田さんのライブは終わりました。満場の拍手でした。

 

生身の脳みそにデータの楔をブチ込まれたような気持ちでした。

 

 

現代アートは基本的に「慣れ」

 

現代アートとかこういうのは基本的に慣れです。前衛的な芸術とか抽象的なアートは意味が分からないという人も居ますが、こういうのは基本的に慣れです。

 

素振りのように毎日触れ続けると魅力が判ってきます。

 

僕は高校時代に部活で怪我をして半分寝たきりになっていた時に、暇だったので(元電気グルーヴの)砂原良徳さんのLOVEBEATというアルバムを良くわからないまま聞き続けていました。聞き始めた頃は意味が全く分からなかったのに、聞き続けていると徐々に良さが徐々に判ってくるようになりました。最終的には大好きなアルバムの一つとなりました。

 

素振りと一緒で「とりあえず聞く」と脳が慣れてきて新たな境地が開かれてくると思います。僕の場合、入り口は音楽でしたが、そこからさらに音楽以外でも様々な現代アートの魅力を感じるようになり、興味を持つようになりました。

 

 

ちなみに五感はすべて脊髄で繋がっていると僕は思っているのですが、現代アートに慣れると食事もさらに深く味わえるようになります。現代芸術に触れる体験を通して味覚も鋭くなった気がしています。

(あまり解っているような口を利くと「うるさ方」の人に何か怒られそうな気がするので、ここらへんにしておきます。)

しかし現代芸術を楽しめるようになってからは、日本のとある田舎のサービスエリアで茶粥を食べただけで感動できるようになりました。これだけは言っておきたいと思います。

感覚や感情にそれまでに無い深みや立体感を感じる事ができるようになると思います。

そこから日々の何気ない変化をより敏感に感じ取って楽しめるようになると思います。

すべての感覚は脊髄を通して繋がっているので。

 

 

エストニア滞在記シリーズ


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