前回の記事の続きです。
日本人は僕以外に行ったことなさそうなエストニアの地方都市「マルヤマー(Märjamaa)」で公共のサウナに入った時の話です。(行ったことあったら逆にすごい。ご一報ください。)
観光地でもないローカルなサウナ体験
見出しのとおりです。サウナに限らず、観光地となると何か観光客向けに特別な配慮があったり、逆に奇抜な仕掛けがあったりと観光客を意識したものが用意されているかと思います。しかし今回リアルローカルを垣間見たいモードになっている時の私にとって、そういう観光客むけの配慮はむしろノイズでしかありません。
私は今回マルヤマー(Märjamaa)という「おそらく日本人で誰も行っていないであろう町」を訪れ、せっかくなのでカウチサーフィンのホストに地元の公共のサウナに案内してもらいました。まさにエストニアのリアルローカルサウナ体験の記録です。
リアルローカルなので、はっきり行って派手な情報や激烈な出来事は起こりません。起こりませんが、これがローカルなエストニアなんだなあということは感じていただけると思います。
ローカルサウナへ行く
という訳で、前回の記事から再登場のこの2人とローカルなサウナに行きました。左が地元のエストニア人、右がコスタリカ人です。
この2人と地元の公共サウナに行きました。
いざ、サウナへ!
というわけで3人でサウナに向かいます。
日差しの当たる可愛らしい小道を通って
着きましたー!!
公共のサウナです! 公共の建物って感じがほんの少しします。
サウナの場所↓ ちなみにこの通りの名前も「サウナ」と言います。
エストニア人は「ヒネリなし」「いつもド直球」です。
サウナの中へ入る
サウナの中ではみんな全裸です。なので、カメラで撮影することはできません。ここからは文字情報が主となります。
数百円の入場料を払って中に入りました。内装は建てたばかりなのか、とてもキレイでした。日本の新築の公民館のような雰囲気がしました。
中に入ると先客のおじさんが座っていました。
(※イメージ画像 実際は裸)
サウナのおじさんが言いました。
おじさん「どこから来たの?」
僕「日本です。」
おじさん「ええ、日本?あの大きな国かい!?」
おじさんは両手を広げ「大きい」という感じのジェスチャーをしました。
それを聞いて僕は思いました。
「ああ、エストニアの人たちからすると、日本って大きい国なんだなあ」と。
振り返ってみれば日本では「日本は島国だから」「日本は小さな国だから」という言葉がよく聞かれます。
が、よく考えたら人口・面積・経済規模、どれを取っても小さくはないわけです。統計的に言って。
このことはまた記事にして書きたいと思います。
これはいわゆる精神論での(しばしば大きい事は良いことという意味を伴った)大きい小さいという意味ではなくて、単に「統計的に」大きい小さいという意味です。
たぶん日本は隣国に「露中米」という世界の超大国トップ3がいるのでそれらと比較すると「相対的に小さい」という印象になるのでしょうね。実際はその3国が例外的にデカすぎなんですよ。
僕がはるばる日本から9000キロ飛行機に乗ってエストニアに降り立っても、まだ日本に居た時と変わらずロシアの国境沿いに居るわけなので。ロシアがデカすぎるんですよやっぱり。笑うぐらいデカい。8000キロ飛んでもロシアの周辺を移動しただけ。
ググってみたらロシアの面積は南極大陸よりもデカかったです。おそ露西亜🇷🇺
公共サウナの中
話をマルヤマーの公共サウナに戻しましょう。脱衣所でおじさんと話した後、さらに奥にシャワー室がありました。脱衣所もシャワー室も正方形の部屋ですがけっこう広め。その奥の3部屋目がやっとサウナでした。
第一印象は熱いというかしびれる感じのサウナ体験でした。耐えきれないというほどではありません。少し熱いかなというぐらいでした。
ところが温度計をみて仰天しました。「130度」
華氏ではありません。摂氏130度です。
僕「人間って130度のサウナに入っても火傷しないのかー。」
どうやらしないようです。人間って100度を越えても生きていけるんですね。即死かと思っていました。
ロウリュで熱くなった石にビールやクワスをかける。これが本場のサウナだ。
熱々になった石の上に水をかけて水蒸気を充満させることをサウナ用語でロウリュと言います。
日本ではそもそも客が勝手にサウナ石に水をかけること自体が禁止だったり、出来てもかけるのは水だけなのが一般的かと思います。
エストニアでは違います。水の他に、なんとノリでビールをかけます。そしてサウナ石にビールをかけた次の瞬間、サウナ室にはビールではなくなんと原料の麦の香りが広がります。
クワスという「パン酵母を発酵させた炭酸飲料」でも同様です。サウナ石にかけるとパンの香ばしい匂いが充満します。とても不思議な体験です。味噌汁をかけると大豆の香りがするのか、死ぬまでに一度試してみたいものです。
サウナに入る前にビールを飲むのがエストニア流
サウナに入る前にビールを飲むなというのが一般的な日本の入り方だと思います。酔った状態でサウナに入ると水分不足になりますし、アルコールが排出されるどころか体内で濃縮される気さえします。極稀にサウナ内で酩酊の末の死亡事故も聞くので、やはり日本ではサウナ前に酒はご法度だと思います。
しかしエストニアでは違います。サウナに入る前に「むしろガブガブ飲んでいくスタイル」です。
最低でもビール瓶の半分は飲んでサウナ室の中に持っていったりします。それを先述のようにサウナ石にかけたり、もはやなんでもあり。「いや、そんな積極的に飲んだら死ぬだろ。」と僕は思いますが、そんなことはお構い無し。
普通に飲みながら130度のサウナでじっとしています。
やっぱり北国の人は違うなあ。と思います。
ロシアもバルト三国も北欧もみんな酒が大好きです。たとえばフィンランドのヘルシンキだと、週末、駅の近くにはアル中の人がたむろしていて独特の雰囲気があります。ムーミンとマリメッコと福祉だけじゃなくて「アル中」もフィンランドの文化なのです。
日本では最近他人に必要以上に酒を飲ませることをアルハラと言いますが、ここらへんの地域ではアルハラという言葉はありません。厳密にはあるのかもしれませんが、日本基準でいうビール1本一気飲みぐらいだとたぶんアルハラになりません。
エストニアに住むスイス人の友人がエストニアの女性と結婚しましたが、結婚式後の宴会で普段無口な新婦の関係者がここぞとばかりにウオツカを勧めて来たそうです。それも1杯や2杯ではなく、新郎が酔いつぶれるまで飲まされるそうです。普段は大人しいエストニア人が外国人に向かってそこまで何かを働きかけることはまずありません。ところが結婚式などの酒の席となると別なのです。日本の酒の文化も似たところがあるかもしれません。酒を飲むとキャラや性格が変わったり、あるいは「普段とキャラや性格が変わったとしても酒の席だと許される。」無礼講という文化もあります。
酒好きの方なら、是非北欧やバルト三国やロシアに行ってみては?と思います。基本的にウオツカとビール天国です。チェコなど中欧のビールも飲めますし。
エストニアで1番ポピュラーなビール「サクビール(Saku Beer)」
パン酵母を発酵させた飲み物「クワス」
ちなみにクワスは僕の大のお気に入りです。無理やり例えるなら「コーラよりも自然でとても優しい口当たりになったナチュラルコーラ」です。本当に僕のお気に入りです。正直コーラよりも味が優しくて好きです。
「頭から冷水ぶっかけ機」が登場
サウナから出てすぐの所にとんでもない装置が設置されていました。
こちらはサウナを出てすぐの所にある「頭から冷水ぶかっけ機」です。天井付近に備え付けられたバケツに冷水が自動で注がれ満タンになると停止します。
これも日本からすると「常軌を逸している」といえるかもしれません。日本にもサウナ室の横に水風呂がありますが、入浴時は心臓から遠い足元から入ります。また家庭用の浴室暖房機のように、浴室と脱衣室との気温差による心臓への負担を防ぐための暖房装置なども売られています。
そういった日本の事情から考えると、この装置はもはや「心臓マヒ発生装置」と言っても過言ではないかもしれません。それが一個人の自宅にあるならともかく公共のサウナに堂々と設置されているので、サウナで火照った身体に頭から冷水をかける行為が極めて一般的なのだということが伺えます。国の厚生省もこれを認めているのだと思います。もしかすると健康に良いとさえ思っているかもしれません。エストニアのことなので、統計的なエビデンスもあるかもしれません。
もちろん私もサウナ室から出て「頭から冷水ぶっかけ機」を挑戦して見ましたが、正直サウナ室との温度差がありすぎて訳がわかりませんでした。冷たいというよりむしろ痛いような。ぶっかけ終わった後はなぜこのようなことをしたのかという疑問だけが残りました。
しかしなにか仕事などでストレスを抱えていたりする時は良いかもしれません。あっと言う間に気分が変わりますよ。精神は脊髄を通して身体と繋がっているので。
サウナを終えたらバスに乗ってハープサルへ
色々と衝撃のサウナ体験は無事終わりました。次はチャイコフスキーが滞在していたことで有名なハープサルに向かいます。